エステハイフと医療ハイフは、使用する機器や施術を行うスタッフ、効果や持続期間など、様々なことが異なります。その比較を通してエステハイフをおすすめできない理由を解説します。

ハイフ(HIFU)とは

ハイフ(HIFU)とは、小顔効果やリフトアップが期待できる美容治療のことです。ハイフ専用の機器を使い、高密度の超音波による熱エネルギーを皮下組織の下層部分にあるSMAS(スマス)層まで与えることで効果を導きます。前立腺がんや子宮筋腫などの治療に使用されてきた方法ですが、その後、美容治療に応用された経緯を持ちます。

ハイフを施術できるのは医療機関のみ

ハイフを施術できるのは医療機関のみ【画像】

ハイフは、皮下組織に熱を与えることで求める効果を引き出しますが、この行為は医療行為にあたります。そのため、ハイフによる治療を行えるのは、原則として医療の専門知識と技術をもつ医師や看護師がいる医療機関のみです。

しかし、ハイフをあつかうエステサロンが増えています。これは、手軽に安くハイフを受けたい客のニーズが高まっているのが理由です。その場合、エステサロンは医療従事者が不在の状態でハイフを行っていることになります。この点、エステで行われるハイフには、デメリットが多いといえるでしょう。

エステハイフと医療ハイフの違い

エステハイフと医療ハイフの違い【画像】

医療によるハイフは、医療行為にしか利用できない高精度な医療機器を用いて医療従事者が行います。そのメリットは、効果が高いうえに持続時間が長く、安全性が高いというものです。効果は皮下組織の深部であるSMAS層まで達し、持続時間は半年から1年におよびます。医療従事者が治療するため、トラブルが起きたときの対処にも期待できるでしょう。一方、エステハイフは、医療用よりも出力を下げた機器により、医療の知識を持たないスタッフが行います。そのため、トラブルが起きたときに的確な対処が期待できるとは限らないでしょう。

また、効果も顔のハリや弾力を高める程度に限定されることが多く、それほど長い持続時間は期待できません。この違いをよく理解した上で、ハイフを受けることが必要でしょう。

機種による出力エネルギー

医療ハイフは医療従事者が行うため、用いる機器には出力の制限がありません。機器の出力するエネルギーを必要に応じて調整できるため、治療の効果が高いといえるでしょう。また、医療ハイフとエステハイフでは、治療に使われる機器のエネルギー照射方式が異なります。医療ハイフに用いられるのは点状方式・線状方式などで、出力が高く皮下組織の深部までエネルギーが届くのが特徴です。引き締め効果が高いため、より理想的なリフトアップと小顔効果が期待できます。

エステハイフに用いられる照射方式は、点状方式・線状方式に比べて出力が弱い蓄熱方式といいます。これは、エステサロンでは非医療用の出力の弱い機器しか導入できないのが理由です。そのため、皮下組織の深層部まではエネルギーが届きづらいといえます。この出力エネルギーの違いにより、医療ハイフとエステハイフでは、期待できる効果が違ってきます。

医療機関で使用されるハイフ機器

医療機関で使用されるハイフ機器が最初に作られたのは2009年です。この初代ともいえる機器は出力が非常に強かったため、治療の効果が期待できる反面、痛みが強く、ダウンタイムも長いというマイナス面も持っていました。その後、初代の持つマイナス面を補う形で、多くのハイフ機器が作られています。以下は、初代以降に作られた医療で使用されるハイフ機器のおもな特徴です。

医療機関で使用されるハイフ機器【画像】
  • 超音波の到達深度:SMAS層(皮膚組織下4.5mm
  • 機器のパワー:中~強程度のパワー
  • 照射による痛み:多少感じるか、ほとんど感じない程度
  • 照射による効果:中~高程度のリフトアップや小顔効果
  • 効果の持続時間:半年~1年程度
  • ダウンタイム:ダウンタイムはほぼなく、あっても軽度の赤みや腫れ程度
  • フェイスラインの料金:2~15万円程度

なお、医療機関で使用されるハイフ機器は、脂肪の溶解や肌の表層部への対応など、1台の機器でさまざまな治療が可能です。

エステで使用されるハイフ機器

エステで使用されるハイフ機器は、医療の知識を持たないスタッフでも使用できるように作られています。以下は、その考えにもとづいて作られているハイフ機器のおもな特徴です。

エステで使用されるハイフ機器【画像】
  • 超音波の到達深度:真皮層(皮膚組織下1.5mm
  • 機器のパワー:弱程度のパワー
  • 照射による痛み:ほとんど感じない
  • 照射による効果:肌のハリや弾力を高める程度
  • 効果の持続時間:1~2ヶ月程度
  • ダウンタイム:ほとんどない
  • フェイスラインの料金:5000円~1万円程度

エステで使用されるハイフ機器は出力が弱いため、期待する効果を得るには回数を重ねる必要があります。

施術するスタッフ

医療ハイフでは、治療は医師や看護師などの医療従事者が行います。医療従事者は、体の仕組みを理解していることが多いため、高い治療効果が期待できるでしょう。また、何らかのトラブルが起きた場合でも、的確な対処が可能です。エステハイフでは、医師の資格を持たないスタッフがハイフを行う場合がほとんどです。そのため、求める効果が得られなかったり、事故が起こったりする可能性があります。たとえば、やけどや神経麻痺の事故が起きる場合があるのです。このことから、安全性や安心感を求めるなら、医療従事者が治療を行う医療ハイフが推奨されるでしょう。

効果や持続時間

効果や持続時間【画像】

医療ハイフは照射されるエネルギーが強く、皮膚組織下4.5mmのSMAS層まで届くため、求められる小顔効果やリフトアップが期待できる場合が多いといえます。そのうえ、治療の効果は、半年から1年ほどの持続が可能です。

一方、エステハイフでは、照射されるエネルギーが弱いため、皮膚組織下1.5mmほどの真皮層までになることが多いといえます。そのため、根本的な小顔効果やリフトアップには向かず、肌のハリや弾力を高めるくらいの効果と考えるのがよいでしょう。効果の持続は1~2ヶ月程度のため、効果を持続させるには頻繁に通う必要があります。

料金

1回のハイフにかかる料金は、医療ハイフは2~15万円、エステハイフは5000円~1万円が相場です。これをみると、料金が安いエステハイフに目が向きがちです。しかし、今までの章でも紹介したように、エステハイフは持続期間が短いことに注意しましょう。これは、効果を持続させるには何度も受ける必要があるということです。そのため、いつの間にか費用がかさんでしまうことも多いといえます。ハイフの料金については、トータルでかかる費用を考えてから、どちらのハイフを利用するかを決めることが推奨されます。

エステハイフがおすすめできない理由

ハイフには、医療機関が行う医療ハイフとエステサロンが行うエステハイフがあります。エステハイフは医療ハイフより料金設定が低いため、選ぶ方も多いでしょう。しかし、実はエステハイフはあまりおすすめできません。ここでは、おすすめできない理由を解説します。

エステハイフはリスクが高く効果が低い

エステハイフはリスクが高く効果が低い【画像】

ハイフは、正式にはHigh Intensity Focused Ultrasound(高密度焦点照射式超音波治療)といいます。高密度の超音波を肌に照射し、熱エネルギーによる刺激を与えることで肌の引き締めやくすみの緩和などを目指す治療方法です。もともと、ハイフ機器は前立腺がんや子宮筋腫などの治療に使われてきた医療機器で、応用で美容医療にも用いられるようになりました。熱エネルギーを加えて皮下組織を変異させる行為は医療行為にあたるため、ハイフは原則として医療機関でしか実施できません。医療ハイフは医師や看護師などの医療知識のある人が治療を担当し、適正な出力を見極めて正しく行う必要がある、難しい治療です。

医療ハイフができないサロンでは、組織の変異を促さない弱い出力の機器を使用して「エステハイフ」と称したケアを実施しています。サロンで使えるハイフ機器は出力が弱いレベルで制限されているため、高い効果は見込めません。たとえば、医療ハイフのようにSMAS筋膜まで超音波を届けることは難しいでしょう。また、医療知識のないスタッフが担当するため、万が一肌トラブルが起きたときに適切なケアが望めないといったリスクがあります。

問題が起こった時に対処できない

ハイフは高密度の超音波を照射して熱エネルギーを与える治療です。そのため、適切に実施しても、体質やその日の肌状態などによって肌トラブルが起きる可能性はゼロではありません。医療ハイフは医療機関で医師や看護師が治療を担当するため、万が一トラブルが起こったときでも、すみやかに適切なケアが受けられます。

一方、エステハイフは医療資格を持たないサロンスタッフが担当することがほとんどです。そのため、肌トラブルが起こったときにすぐに適切な処置を受けることは難しいでしょう。エステサロンでも、肌の状態を確認し出力を調整してハイフを実施しているので、トラブルなく終わることが大半でしょう。とはいえ、問題が起こったときのことを考えると、エステサロンでのハイフは不安が残ります。

トラブルや事故件数も増加傾向にある

消費者庁の発表によると、ハイフによるトラブルや事故は増加の傾向にあります。医療機関でトラブルが起きた例も皆無ではありませんが、特にエステサロンで顕著です。事故情報データバンクのデータによると、2015年11月から2022年12月の間に、エステサロンで96件、美容クリニックで31件、セルフエステで8件発生しています。トラブルの内容は「神経・感覚の障害」「皮膚障害」「熱傷」「その他」です。特に「神経・感覚の障害」は、1ヶ月以上にわたって続いた割合が、全施設合計で15件中8件(53.3%)と高くなっています。

トラブル発生の現状を受けて、国民生活センターは2017年に「エステサロンでハイフを受けないように」との注意喚起を行いました。また、2023年には厚生労働省から各都道府県に向けて「エステサロンに対してハイフ機器を使用しないよう監視・指導を徹底するように」との通達を出しています。エステの主要団体ではハイフを禁止しましたが、団体に加盟していないサロンでは依然として実施されているのが現状です。

ハイフ治療は医療機関による施術がおすすめ

ハイフ治療は医療機関による施術がおすすめ【画像】

ハイフ治療を受けるなら、エステサロンではなく医療機関にしましょう。医療機関であれば、解剖学などの必要な医療知識を持った医師や看護師が担当し、適正な出力・照射方法で実施するため、神経障害などのトラブルが起こるリスクは低い状況です。トラブルが起きたとしても、すぐに的確な医療処置が受けられるでしょう。一方、消費者庁が実施したアンケート調査によると「エステサロンでは担当者に対するハイフ機器の取り扱いや照射方法などの教育が十分ではない」ことが分かっています。また、エステサロン利用者に対する説明も不十分な傾向にあります。これでは、ハイフに対する不安を払拭することはできないでしょう。

肌のたるみやシワの緩和を目指すなら、リスクの少ない環境で適切な治療が受けられる医療ハイフがおすすめです。

エステハイフのよくある質問

エステハイフに関してよくある質問を取り上げ、解説します。ぜひ参考にしてください。

Q エステのハイフは違法ですか?
A 消費者庁の見解によれば、ハイフが医師法における医行為に該当するかどうかは明確な判断が示されていない状態です。ただし、厚生労働大臣への意見として「医行為に該当するものがあると考えられるため、医師法上の取り扱いを整理し施術者を限定するべき」と述べています。違法と考えられるものの、法規制が進んでいない状況といえるでしょう。
Q エステのハイフに効果はありますか?
A 表皮から真皮にかけてであれば、エステハイフの弱い出力でも超音波が届けられるため、肌状態が整いやすくなるなどの結果は期待できるでしょう。ただし、明確な変化は見込めないかもしれません。
Q ハイフがエステサロンで禁止されるのはいつから?
A 国民生活センターにおける注意喚起を受けて、エステ業界では主要団体がハイフを禁止しています。厚生労働大臣も、各都道府県に対してエステサロンでハイフを行わないよう指導の徹底を通達しています。とはいえ、主要団体に加盟していないサロンも多く、法整備も追いついていないため、いつから禁止されるとは断言できない状況です。