青あざは、日常生活で誰もが経験することがある傷の一つです。しかし、その種類や治療法について知らない人も多いのではないでしょうか。青あざにはさまざまな種類があり、原因や症状によって治療法も異なります。本記事では、青あざの種類とその治療法について詳しく解説します。青あざを治療するための正しい知識を身に付け、早期の対処につなげましょう。
青あざとは
青あざとは、皮膚の下にある血管が破れ、血液が周囲の組織に漏れ出した結果、皮膚が青紫色に変色する現象のことを指します。衝撃や打撲、落下などの外力が加わった部位に発生することが多く、軽度のものであれば自然に治癒する場合もありますが、深刻な場合には、痛みや腫れなどの症状が現れることもあり、適切な治療が必要となります。
青あざには、浅い部分に発生する表在性青あざや、深い部分に発生する深在性青あざなど種類があり、治療法はその種類や症状に応じて異なります。
そのほかにも、先天性の蒙古斑や青色母斑なども青あざと呼ばれることがあります。正確には青あざとは区別されますが、本記事ではそのような青あざについても解説していきます。
青あざの種類
赤ちゃんが生まれてすぐに、皮膚に青紫色の斑点が現れることがあります。これらの斑点は、出生時青あざと呼ばれ、種類によって原因や特徴が異なります。蒙古斑や太田母斑、青色母斑、後天性真皮メラノサイトーシスなど、代表的な出生時青あざを紹介し、それぞれの特徴について解説していきます。
蒙古斑
蒙古斑とは、主にアジア人に多く見られる先天性の皮膚疾患で、出生時青あざの一種です。一般的に、赤ちゃんが生まれてすぐにお尻や背中に現れ、その後数年かけて徐々に薄くなっていきます。蒙古斑は、メラニン色素が多く存在するために青灰色や黒褐色に見え、しばしば「青あざ」と混同されることがあります。
蒙古斑は先天的に存在するもので、生活習慣や環境の影響を受けることはなく、健康に支障をきたすこともほとんどありません。ただし、蒙古斑が濃く出る場合は、時に差別や偏見の対象になることがあるため、なかには心理的な負担を感じる方もいます。
治療としては、蒙古斑は一般的に自然に薄くなっていくため、特別な治療は必要ありませんが、蒙古斑が異常に大きく、形状が不規則である場合は、皮膚科医の診断を受けることが望ましいです。また、美容目的であれば、レーザー治療や光治療、皮膚移植などの方法もありますが、リスクや副作用もあるため、事前によく考える必要があります。
太田母斑
太田母斑は、顔に現れる点状の「青あざ」のことで、生後すぐに現れる「早発型」と思春期に現れる「遅発型」の2種類があります。額や頰、眼の周囲や上唇にかけて出現することが多いです。太田母斑は青いだけではなく、紫色や茶色を帯びていることが特徴的です。外見上の理由で治療を行う場合は、レーザー治療などの方法があり、数回の継続治療が必要とはなりますが、回数を重ねることで着実に改善していきます。
青色母斑
青色母斑は、皮膚に現れる色素沈着によって生じる病気です。出生時に見られることもあれば、成長の過程で発症することもあります。青みがかった色合いが特徴的で、皮膚の奥でメラニン細胞が増殖することが原因とされています。大きさが1センチ以下の場合ほとんど悪性化することはありませんが、1センチ以上の大きいものの場合は悪性化の懸念もあるため治療が必要となります。
青色母斑には、身体のどこにでも現れることがありますが、一般的には顔や手足、背中などに現れることが多く、1センチ以下のものがほとんどでホクロに似た形をしています。しばしば盛り上がった形状をしており触ると硬いのが特徴です。
後天性真皮メラノサイトーシス
後天性真皮メラノサイトーシスは、真皮層でメラニン色素が出てしまうことが原因ともいわれていますが、詳しくは分かっていません。10代後半から30代にかけて目の下や頬骨あたりに紫っぽいシミが現れることが特徴です。紫外線やホルモンバランス、摩擦などの刺激が関与するともいわれています。そのため、できるだけ紫外線を避け、日々の洗顔はできるだけ摩擦で傷めないように注意しましょう。
ホルモンバランスの乱れは女性の場合、月経や妊娠があるため致し方ない部分ではありますが、日々の生活習慣の見直しや、外部からのストレスをなるべく避けストレスを溜め込まないようにしましょう。
青あざができる原因
出生時にできる青あざは、真皮に存在するメラノサイトが消えずに残り、メラニン(色素)を産生することが原因といわれています。この真皮層で産生されたメラニン色素は皮膚の深いところにあり、それが青く見えるため青あざと呼ばれます。
また、遺伝的要因も青あざの原因に関与している可能性があります。蒙古斑は主にアジア系の赤ちゃんに見られ、太田母斑は主に日本人に多いといわれていて、遺伝子の性質が原因でメラニン色素が増殖してしまう可能性もあります。
一方、外傷によってできる青あざは、皮膚内で血管が破れて出血が起こることが原因です。血液中のヘモグロビンが酸素を失って鉄分が酸化すると、皮膚表面に青紫色のあざが現れます。
青あざの治療法
青あざには主に、太田母斑と異所性蒙古斑があります。太田母斑は目の周りなど顔の表面にできる、後天性の青あざです。生まれてから間もなくできるものもありますが、思春期以降の大人にも現れる傾向があります。皮膚の中にあるメラニン色素の量が通常よりも増加することにより起きるのが太田母斑です。その原因は、内分泌環境や遺伝子の異常が関与しているものと考えられています。
異所性蒙古斑は、生まれつき日本人のほとんどのお尻部分にできる蒙古斑が、お尻以外の部位にできる場合を指します。一般的な蒙古斑は成長とともに消えるのであまり気にする必要はありませんが、異所性蒙古斑は服を着ていても見える部位に出てくる場合もあります。面積が大きく目立っている異所性蒙古斑は、自分の容姿を気にする思春期以降の子どもにとって精神的な苦痛が大きくなるので、親の判断で治療するのもいいでしょう。
太田母斑や異所性蒙古斑を医学的に治療する方法として確立されているのが、皮膚へのレーザー照射です。
レーザーによる治療
太田母斑や異所性蒙古斑といった青あざは、基本的にレーザー治療によってほぼ除去が期待できます。ほとんどのレーザー治療で健康保険が適用できますので、治療費の負担を抑えて受けられるのもメリットです。特に青あざには、Qスイッチレーザーによる治療が使われます。Qスイッチレーザーは、エネルギーを増幅した強力なレーザー光を極めて短時間だけ照射する装置です。
所要時間は、事前の麻酔も含めて1回あたり約30分です。麻酔の方法は局所注射の他、クリーム、テープによるものがあります。麻酔の効果により、レーザー治療で感じる痛みは、かなり軽減されます。
治療の効果
Qスイッチレーザー治療により、青あざの色を構成する成分であるメラニン色素を破壊することができます。また、メラニン色素以外に反応しにくいレーザー光なので、青あざになっていない周辺の皮膚組織を守ることもできるのです。治療後、シャワーや入浴、メイクはレーザーを受けた当日から可能ですし、洗顔は翌日から許可されます。よって、日常生活にすぐ復帰できるでしょう。ただし、照射部分の皮膚はかさぶたになるので、正常な肌に戻るまで、7日から10日ほどのダウンタイムを要します。
ただ、1回のレーザー照射で青あざを完治させることは難しく、3~4ヶ月間隔で4~5回の照射が必要となるのが一般的です。つまり、完治には約1年半から2年が必要となります。なお、Qスイッチレーザー治療は、小さな子どもほど成人よりも皮膚が薄いため効果が高いといわれています。また、日焼けが少ない肌ほど、低出力のレーザー光でも皮膚の深い部分まで光線が到達するので、より高い効果を望めます。
治療のリスク
レーザー治療をした場合、その部分の皮膚に赤みや腫れ、痛み、かさぶたができる場合があります。ただ、そのほとんどは一時的な症状で、7日から10日ほどのダウンタイム中に、これらの症状は引いていきます。稀に、皮膚に色素沈着や痕跡などが生じる副作用が起こることがあります。レーザー照射後の色素沈着を避けるには、あざの部分に日光が当たって日焼けしないよう配慮することが大切です。レーザー治療でかかる費用は、保険適用となれば比較的安く済みますが、あざの種類や範囲によっては自由診療となる場合がありますので、前もって医師から説明を受けるようにしましょう。
レーザー治療の前に行う麻酔は、成人なら表面麻酔などの軽い方法で十分です。乳幼児にできている青あざなら、容姿が気になる年頃である思春期より前に、親の判断で治療するのもひとつの方法でしょう。
青あざのよくある質問
- Q 赤ちゃんの青あざは大人になったら消える?
-
A
赤ちゃんの肌にある青あざの多くは「蒙古斑」で、成長とともに消えていきます。普通は5~6歳ごろ、遅くとも10歳までに蒙古斑は消失しますが、10歳になっても消えない蒙古斑は自然に消える可能性が低いです。それがもし、服を着ても見える位置にできる異所性蒙古斑なら、レーザーで除去することを検討しても良いでしょう。
- Q レーザー治療は子どもでも受けられる?
-
A
子どものうち、特に幼児期は皮膚が薄いため、レーザー治療による効果が出やすいメリットがありますし、レーザーを照射する皮膚の面積も小さく済みます。また、治療後の色素沈着が成人に比べて起きにくい点でも有利です。ただし、全身麻酔が必要となったり、大人になって青あざが再発したりするおそれもあるため、十分に注意してください。
- ※当院では幼児への治療は行っておりません。
- Q 青あざが突然できたら何かの病気ですか?
-
A
生まれつきの蒙古斑もあれば、思春期以降の大人に生じる青あざもあります。突然の青あざができた場合、白血病、血友病、クッシング病、血小板減少性紫斑病などの病気が原因となっている可能性も否定できません。ただし、突然の青あざが全て病気によるものではないので、念のため医師による診療で確認しましょう。