ニキビは正しくケアしないと治った後にシミになってしまいます。特に、炎症をともなったニキビができている場合は注意が必要です。今回は、ニキビ跡にできてしまうシミの原因とその治療方法について詳しく解説します。
ニキビ跡がシミになる原因は?
ニキビ跡がシミになる原因は、主に炎症による真皮層での出血とメラニン色素やコラーゲンの過剰分泌にあります。ニキビの症状が重くなればなるほど出血や過剰分泌が起きやすくなるので注意が必要です。ニキビができてしまった場合には、できるだけ早く治療しましょう。
ニキビ跡のシミの種類
一言でニキビ跡といっても、どのようなニキビ跡なのかによってシミの原因や治療法は異なります。まずは自身のニキビ跡がどのようなタイプなのかを見極めることが大切です。ここからは、ニキビ跡にできるシミの種類を3つ、詳しく解説します。
赤いニキビ跡
赤みのあるニキビ跡は炎症後紅斑と呼ばれています。この症状の原因は、毛穴の部分で炎症が起きていることです。この炎症によって患部の毛細血管が増えてしまい、肌が赤みを帯びるのです。また、ニキビがつぶれたときの出血が原因でニキビ跡に赤みが出ることもあります。血管の外に漏れ出した赤血球が、そのまま赤い色素沈着としてニキビ跡に残ってしまうのです。
赤みは炎症が治まって肌が平らな状態になってもしばらく残ることがありますが、多くの場合、肌のターンオーバーが繰り返されることによって自然に消えてしまいます。重要なことは、なるだけ肌に炎症が起きていない状態を維持することだといえるでしょう。
しかし、炎症が肌の深い部分で起きている場合、赤みはなかなか消えません。そのような場合、原因となっている血管にアプローチすることで肌の赤みを改善しやすい状態に導きます。また、外用薬が用いられることも多いです。たとえば、美容皮膚科でよく行われているのは抗酸化作用のあるビタミンCを導入し、活性酸素を除去することで皮脂の分泌を抑える方法です。そのほか、ターンオーバーを促すためにピーリングが行われることもあります。
色素沈着によるニキビ跡
ニキビの炎症が長期化すると、ダメージから肌を守るためにメラノサイトが活性化します。そうして炎症が起きた部分に大量のメラニンが生成されると、そのメラニンが薄茶色になって色素沈着を起こしてしまうことがあります。この状態がニキビ跡の色素沈着です。この症状は、肌が日焼けした際に赤くなった後、茶色く変色するのと同じ原理です。
ニキビ跡が色素沈着を起こした場合も赤みが出た場合と同様、肌のターンオーバーによって自然に消えてゆきます。しかし、色素沈着が濃く残ってしまうと、なかなか消えないこともあるので注意が必要です。ニキビのできている状態の肌はターンオーバーが乱れやすく、その結果、メラニンが排出されにくい状態になってしまうためです。重要なことは、メラニンの産出をなるだけ抑えることと、肌のターンオーバーを促進してメラニンの排出を促すことです。
色素沈着を起こしてしまった場合は、ビタミンC誘導体やレチノイド、ビタミンEといった処方薬によって炎症を抑えたり、色素沈着の改善を試みたりします。また、ピーリング治療やトーニングによって肌の再生サイクルを整えるための治療も行われます。
ケロイドのニキビ跡
ケロイドは、肥厚性瘢痕とも呼ばれます。ニキビの炎症が長期化すると、破壊された細胞を修復するために皮膚のコラーゲンが過剰に生み出されるようになります。コラーゲンが過剰につくられると、肌の表面で塊となってしまうのです。この、コリコリとした硬い触感のできものがケロイドです。ケロイドを治すためには、できるだけコラーゲンを減らして塊をほぐす必要があります。
ケロイドがよく起きる場所は、顎の下のように比較的皮膚が伸ばされやすい部位です。ケロイドは自然に治癒することもあるものの、症状がひどい場合には何年もの間しこりとして残ってしまったり、健常部へしみ出すように拡大したりすることがあります。また、抵抗性が強いため治療が難しく、再発する危険性も高い、という特徴もあります。
皮膚科などでケロイドの治療法として多く用いられているのは、ステロイド薬です。ステロイド薬には注射や塗り薬、ステロイドテープのような貼り薬など、さまざまな種類があります。そのほか、皮膚にテンションがかかることを防ぐ治療としてシリコンジェルシートが処方されたり、周囲の筋緊張と皮膚の張力を和らげるためにボツリヌス毒素の注射が行われたりします。赤みが消えない場合はレーザーで細かい血管を破壊する治療が行われるでしょう。治療期間の目安は1~4年程度です。
シミになりやすいニキビの特徴
ニキビは悪化度合いによって5つに分けられます。白ニキビや黒ニキビは初期の段階なのでこの段階で治せればほとんどシミにはなりませんが、赤ニキビや黄ニキビは中度の炎症を起こしているので、ケアを間違えるとシミになってしまう可能性があります。紫ニキビは重度の炎症を起こしており、治療のために医療機関に通う必要があります。
ニキビからシミをつくらないための基礎習慣
ニキビができてしまった際に、対処方法を間違えるとシミが残ってしまったり、そのシミが濃くなってしまったりすることがあります。今回は、ニキビからシミをつくらないための基礎習慣について紹介していきましょう。
紫外線対策をする
ニキビができているとき肌はとても弱く、ニキビがある場所は特に傷ついている状態です。バリア機能も低下しており、少しでも刺激を与えるとシミが残ってしまう可能性があります。その刺激の一つが、紫外線です。太陽から降り注がれる紫外線により過剰にメラニンが生成されると、シミとして残ってしまいやすくなります。普通に生活している限り、紫外線を一切浴びないのは不可能です。できる限りの紫外線対策を行い、過剰なメラニン生成を防ぐ必要があります。
紫外線対策の一つが、日焼け止めの使用です。日焼け止めを塗り、紫外線をダイレクトに浴びてしまうのを極力防ぎましょう。日焼け止めは、夏の時期や晴れた日のみでは不十分です。冬の時期でも紫外線は降り注いでいます。また、空が雲に覆われていても同様です。室内にいても窓から紫外線は降り注いでくるため、部屋の窓際にいることが多い人や、入ってくる光の量の多いオフィスで働いている人も日焼け止めは欠かせません。
屋外に出る際には、日傘や帽子の着用も重要な紫外線対策となります。日が落ちてから買い物に行くなど、紫外線量ができるだけ少ない時間帯に出かけるのも、紫外線対策となるでしょう。日中に外に出なければならないときは、日陰を選んで歩くのも紫外線対策となります。完全に紫外線を断つことはできませんが、ニキビができている箇所を太陽の光に直接さらさない行動はシミをつくらないためには不可欠です。
保湿・スキンケアをする
肌の状態が悪化すると、ニキビの数が増えてしまう可能性があります。また、なかなかよい状態へと戻らなかったり、逆に、ニキビが大きくなったりするリスクも高めてしまうでしょう。同じ場所や近い場所にいくつものニキビができたり、何度もニキビの発生を繰り返したりすると、徐々に肌のターンオーバーが間に合わなくなります。肌がより傷ついてしまい、ニキビ跡のシミができやすい状態となってしまいます。
肌の状態をできるだけよく保つためには、スキンケアが不可欠です。とりわけ、保湿は欠かせません。肌は特に何も塗布しなくても、状態が正常に保たれるような仕組みになっています。しかし、ニキビができていたり、できやすい状態になっていたりする場合には、そのような仕組みが十分に働いていないといえます。乾燥が、ニキビができやすい状態を生み出している原因の一つとなっている可能性があるでしょう。
肌の乾燥を防ぐには、化粧水や乳液、クリームなどを適切に塗布する習慣が重要です。定期的に保湿を行い、スキンケアを徹底します。保湿をはじめとするスキンケアを怠ると肌が乾燥し、過剰に皮脂が分泌されます。本来、皮脂は肌の乾燥を守るものです。しかし、肌の乾燥具合によっては余分な皮脂が分泌され、それが毛穴につまりニキビをつくる原因となります。シミになるのを防ぐにはスキンケアを徹底し、ニキビを繰り返さない状態をつくらなければいけません。
また、自分の肌に合った基礎化粧品の選択も大切です。肌に合っていない化粧水やクリームでは、毎日の使用により、余計に肌を傷めかねません。肌への過剰な刺激は、やはりニキビの原因となりえます。肌に合わない化粧品を使い続けるとニキビからシミができやすくなる可能性が高まるので、さまざまな化粧水やクリームを試したうえで選択しましょう。
肌に刺激を与えないようにする
紫外線や自分に合わない基礎化粧品の使用も、肌への刺激といえるでしょう。それ以外にも、物理的な刺激は極力避ける必要があります。肌に刺激を与えると、ニキビを潰してしまいかねません。ニキビの種類によっては、潰すことでシミになりやすくなるものもあります。肌を必要以上に傷つけてしまうためです。ニキビ跡のシミだけではなく、肌を傷つけたことによりシミが残ってしまうリスクも高まるため注意しましょう。
ニキビを潰すつもりはなくても、ニキビを気にして手で触れるのも避けたいところです。また、洋服を着たり脱いだりする際にも、洋服がニキビのある箇所に当たらないよう注意しなければいけません。ムダ毛処理のためにカミソリを使用する人も少なくないでしょう。その際にも、ニキビがある箇所へのカミソリの使用は控えた方が無難です。産毛の処理のために優しくカミソリを当てるだけでも、ニキビや弱っている肌には大きな刺激となります。カミソリ以外の、光やレーザーによる脱毛も避ける必要があります。
かゆみを抑えようと、かいたり叩いたりするのも厳禁です。メイクや基礎化粧品の使用は避けるのが困難ですが、顔に何か塗る際には、より丁寧に優しく塗ることを心がけましょう。基礎化粧品は、強く塗り込まなくても一定の層までは浸透していきます。また、表面がしっかりと保湿されている状態とするのが重要であるため、顔を覆うようなイメージで塗布するとよいでしょう。ニキビの状態がよくなるまでは、ファンデーションも含め、できるだけメイクは軽めに抑えておきたいところです。
正しい洗顔をする
肌を清潔に保つためには、洗顔も欠かせません。しかし、正しい方法での洗顔が何よりも重要です。洗顔時は、ぬるま湯を使用します。熱すぎても冷たすぎても、肌には刺激となってしまいます。汚れが落ちやすく、しかし刺激が強くならないよう、ぬるま湯で洗いましょう。洗顔料を泡立て、その泡で顔を覆うように洗うのがポイントです。手を直接肌に当てて洗わなくても、余分な汚れはほとんど落ちます。むしろ、手を当てて刺激を与えてしまうと、ニキビが悪化しシミとして残りやすくなるので注意しなければいけません。
洗い流す際も、ぬるま湯で優しく泡を落としていきます。顔に手を過剰に当てる必要はなく、手ですくったぬるま湯で顔を覆うように泡を落とす洗い流し方で十分です。タオルは軽く押し付ける程度で水気をとるよう意識します。洗顔料も肌に合わないものや刺激の強いものがあるため、選択には要注意です。ニキビができている状態のときには、刺激の強い洗顔料は避けましょう。
ニキビの特徴ごとのシミ化予防対策
ニキビとは、毛穴が詰まり炎症を起こすことでできる吹き出物です。ニキビには白ニキビや黒ニキビなど進行段階に応じて複数の種類があり、それぞれ特徴が異なります。白いニキビであれば跡が残らずきれいに治ることも珍しくありません。一方、赤いニキビになると跡が残りシミ化する可能性が高く、適切なケアが必要です。ここでは、ニキビの種類ごとに主な特徴とシミ化を予防する対策について解説します。
赤いニキビ
赤いニキビは、毛穴が詰まり、内部に溜まった皮脂によってアクネ菌が繁殖して炎症を起こした状態です。炎症を起こしているため、ニキビの周りも赤くなり、大きなものでは触ると熱を感じることもあります。赤ニキビが厄介なのは、いったんできると治りにくく、炎症がひどいと治っても跡が残りやすい点です。痛みやかゆみがありますが、なるべく触らないようにしましょう。あまり触ったりつぶして治そうとしたりすると、さらに悪化する恐れがあります。メイクはなるべくせず、洗顔は優しく行って丁寧に保湿ケアすることが大切です。
なかなか状態が良くならなければ、早めに医療機関を受診しましょう。病院では、塗り薬や内服薬で炎症を抑えたり、ピーリングによって角質の一部を取り除いたり、面皰圧出でニキビの芯をだしたりする治療を行います。レーザー治療や光治療なども有効です。
白いニキビ
白いニキビは、初期段階のニキビです。毛穴の表面が閉じて皮脂が溜まった状態のため、小さく盛り上がり白っぽく見えます。ポツンとできていると気になるものですが、むやみに触れたりつぶしたりするのはよくありません。刺激になったり雑菌が入ったりして、ニキビを進行させる恐れがあります。毛穴はふさがっているものの、炎症は起きていないため、比較的治りやすいニキビです。
よく泡立てた石けんや洗顔料で優しく洗って肌を清潔に保ち、肌質にあった化粧水や乳液でたっぷり保湿しましょう。睡眠をしっかり取るなど、規則正しい生活を送ることも大切です。白ニキビを触ったりつぶしたりせず、丁寧なスキンケアをして過ごせば、跡を残さずおさまる可能性は高いでしょう。
茶色いニキビ
茶色いニキビとは、重症化したニキビが治ったあとにメラニン色素が沈着してできた茶色いシミのことです。外部刺激を受けた際は、肌を守ろうとしてメラニン色素が生成されます。紫外線を浴びて肌が日焼けするのは、この働きのためです。炎症が起こったときも同様で、肌を守るためにメラニン色素が大量に生成されます。生成されたメラニン色素は肌に留まり、自然に消滅することはありません。ただし、通常はターンオーバーによって古い角質層がはがれ落ちる際に、メラニン色素も一緒に体外へと排出されます。ところが、ニキビができるとターンオーバーが乱れたりメラニン色素が過剰に生成されたりするため、うまく外に排出できず留まることがあります。これが茶色いニキビです。
茶色いニキビは、丁寧にスキンケアするとともになるべく紫外線を浴びないようにする必要があります。医療機関では、メラニン色素の排出を促すため、ケミカルピーリングやレーザー治療などの治療法を行います。
黒いニキビ
黒いニキビは、毛穴が開き、内部に溜まった皮脂が空気に触れて酸化し黒くなっている状態です。白ニキビから進んだ状態ですが、炎症は起きていません。黒く見えるので気になりますが、むやみに触って悪化させないことが重要です。丁寧に洗って余分な皮脂や汚れを落とし、たっぷり保湿する基本のケアを続けましょう。白ニキビと同様、跡を残さずに治る可能性は高いです。
ニキビ跡の治療は皮膚科に相談
白ニキビなどは、早期に適切なケアをすればきれいに治る可能性は高いです。一方、赤ニキビまで進行してひどい炎症が起きると、ニキビはなくなっても赤みやシミ、クレーターのようなへこみといった跡が残ることがあります。ニキビ跡ができてしまうと、セルフケアだけで自然に元の肌状態に戻すことは簡単ではありません。ニキビ跡を目立たなくするためには、皮膚科を受診して適切な治療を受けるのがおすすめです。
ニキビ跡の治療には、ピーリングやレーザー、光治療などさまざまな選択肢があります。ピーリングは、薬剤によって肌表面に残った古い角質を取り除き、ターンオーバーを促進する治療です。レーザー治療では、黒い色素に反応するレーザーを肌に照射してメラニン色素を分解し、排出を促します。また、フラクショナルレーザーなどは皮膚に微細な穴を開けることで再生を促すことが可能です。再生時にコラーゲン生成も促進されるため、肌のハリがアップしたりニキビ跡が改善したりすることも期待できます。
光治療は黒い色素に反応する複数の波長の光を照射するもので、ニキビ跡のほか、ニキビの殺菌やくすみなどにも同時にアプローチ可能です。
ニキビ跡のシミについてのよくある質問
- Q ニキビ跡のシミは消えますか?
- A ニキビ跡にできたシミは、ターンオーバーが正常に行われていれば徐々に薄くなっていくでしょう。ただし、色素沈着の度合やターンオーバーの周期により、目立たなくなるまでの期間には大きな個人差があります。数カ月から半年ほどで目立たなくなることが一般的ですが、2~3年かかるケースも見られます。
- Q ニキビ跡のシミを消す方法はありますか?
- A ニキビの跡にできたシミは、美容皮膚科で適切な治療を受けることで薄く目立たなくすることは可能です。ただし、1回の治療で消すことは難しく、何回か受ける必要があります。ピーリングや肌への美肌成分の導入、レーザー治療、光治療などさまざまな選択肢があり、赤みや茶色いシミ、へこみなどニキビ跡の状態に応じた治療が可能です。
- Q 茶色のニキビ跡はどうやって治しますか?
- A 茶色のニキビ跡はメラニン色素が肌に滞留してできたものです。目立たなくするためには、ピーリングやレーザー治療、光治療などが用いられるでしょう。ピーリングはメラニン色素が留まる古い角質を取り除き、新しい肌の形成を促します。レーザー治療や光治療では、メラニン色素を細かくして排出を促すことが可能です。
- Q ニキビ跡のシミは治療するとどのくらいで消えますか?
- A シミの濃さや大きさ、肌質などにより、消えるまでの期間には個人差があります。短期間で目立たなくなるケースもあれば1年近くかかるケースもあり、さまざまです。ニキビ跡が気になる場合は、なるべく早めに医療機関を受診して治療を開始するとよいでしょう。